信頼性が高く、軽量で効率的なツールを最も必要としているのは、まさに宇宙飛行士です。そこで、NASAの宇宙飛行士がどのようにEDCツールを宇宙で使っているのか見てみましょう。NASAの宇宙飛行士は、標準装備とカスタム装備の両方をミッションで使用してきました。中でも、宇宙での使用が正式に認められたEDCギアとして最も有名なのはオメガ スピードマスターですが、ISSや過去の数多くのミッションでは、軽量で持ち運びしやすい高品質なツールが必要とされる日常的な作業がたくさんあります。
宇宙で一般的なEDCギアは使えるのか?
こちらは、NASA宇宙飛行士のアン・マクレインが、クルーメイトのニコル・エイヤーズにより撮影された、2025年5月の国際宇宙ステーションでの作業の様子です。この写真に一般的なedcツールが写っていないのには2つの理由があります。1つは、宇宙服を着た状態では小さなツールを扱えないこと。もう1つは、宇宙ステーション外の過酷な環境で使われる工具は、急激な温度変化や真空空間で潤滑剤が奪われる状況に耐えられるよう特別に設計されているためです。

NASAミッション専用に設計された特別なツール
NASAの宇宙船やISSの外で行うミッション必須の作業では、ツールは特別に設計・製造されます。中には、1997年のハッブル宇宙望遠鏡の修理作業のために設計・製作されたラチェットのように、非常に特定の作業向けに作られたカスタム工具もあります。こうした専用ツールは、宇宙服を着て真空下で作業する宇宙飛行士が、動きに制限がある中でも扱えるように作られています。
なぜEDCギアが国際宇宙ステーションの内部で使われているのか?
ミッションスペシャリストやフライトエンジニアは、ISS内部で日常業務を行う際にedcツールを使っているのでしょうか。再使用型ロケットによってコストが下がったとはいえ、軌道に物資を運ぶには依然として莫大な費用がかかります。そのため、宇宙へ運ぶあらゆる物資は慎重に、そして文字通り“重量”を見極められています。ISSの内部では、地上で使い慣れたEDCギアを宇宙飛行士が使っていることを想像しても不思議ではありません。
EDCギアを宇宙へ運ぶコストはどれくらい?
宇宙でツールを使う際に真っ先に考えるべきなのが、そのツールを目的地まで運ぶためのコストです。NASAがISSへ物資を運ぶ場合、1kgあたりの輸送費はおよそ2万3,000ドルとされています。そのため、その価格に見合うだけの価値があると判断されたものだけが搭載されます。Leathermanのマルチツール1本をISSへ運ぶコストは約6,000ドルとされており、非常に重い決断と言えます。

ISSでEDCギアを3Dプリントできるのか?
NASAが最近示したように、ISSでのツールの3Dプリント実験は一つの解決策になり得ます。ただ現状では、すでに搭載されているツールキットやEDCツールの不足分を補う用途に限られるのが現実的と考えられています。

宇宙飛行士はISS内部で一般的な工具を使っているのか?
2001年、スペースシャトルがISSの組み立てやサービスに使われていた頃は、現在ほど重量が重要視されていなかったのかもしれません。上の写真では、エクスペディション3のミッションコマンダーであるフランク・L・カルバートソン Jr.が、ISS初期の組み立て段階でユニティ(ノード1)のメンテナンス作業を行うためにフルサイズのラチェットレンチを使っている様子が写っています。
NASAの画像アーカイブには、どんなEDCギアが使われているのか?
NASAの画像アーカイブは非常に膨大で、一般公開されています。そのため、宇宙飛行士がどんなツールを持ち込み、どんなedcツールとして使っているのかを実際の写真から調べることが可能です。ただし時間のかかる作業でもあります。幸いにも、軌道上にどんなEDCギアが持ち込まれているのかを熱心に調べてくれているEDCファンもおり、その一例がこちらの投稿です。宇宙飛行士ジョニー・キムが何を携行しているのかを考察した内容がまとめられています。
711L EDCギア: どこへでも持っていけるタフで精密なツール
現在の宇宙飛行士にとって、標準的なマルチツールやアクセサリーは実用的な選択肢になっています。アポロ計画やスペースシャトル時代と比べて予算が大幅に縮小されている今の宇宙開発では、ISS内部での作業に市販の実績あるedcツールを選ぶことは合理的です。もちろんEVA作業用には特別な工具が必要ですが、それでも日常作業では十分に役立ちます。現在ISSで使われているedcツールの中には、711Lフレックスヘッドラチェットレンチも含まれています。次の記事では、このツールについてさらに詳しくお話しします。



